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No.286 機能的DNAセンサー

イリノイ大学のYi Liu教授らが開発した機能的DNAと市販の血糖測定器(グル
コース・メーター)を組み合わせた巧みな機能的DNAセンサー(functional DNA
sensor)が少し前にNature Chemistryに発表され、3次情報媒体に紹介されてい
ます(注1、2)。高速、簡便、安価に診断マーカーや食品や環境中の汚染物質が
測定できるプラットフォーム技術としての展開が期待されるからです。機能的
DNAとは標的分子(測定したい物質)を識別して特異的に結合するDNA断片を指し
ますが、ここで使われているDNA断片はもう1か所、インベルターゼ(蔗糖をブド
ウ糖と果糖に加水分解する酵素)への結合部位を持ち、標的分子が結合するとイ
ンベルターゼを遊離するという特徴を持っています。

標的分子とインベルターゼとにダブルの結合能力を持つそのような機能的DNA断
片を結合させた磁性粒子が機能的DNAセンサー技術において中心的な役割を果た
します。
例えば麻薬患者の血中コカインを測定したい場合、コカインとインベルターゼと
に結合能力のあるDNA断片を結合させた磁性粒子のけん濁液(A)を血液試料
(B)と混合したものに、コカインが結合するとインベルターゼが遊離されま
す。ついで磁石で磁性粒子(未反応のインベルターゼを付着させたままの磁性粒
子①とインベルターゼを遊離した後の抜け殻の磁性粒子②の両方)を取り除くと、
試料中のコカイン量に見合った量の遊離したインベルターゼを含む混合液(C)
が残ります。Cと蔗糖液とを混合し反応させるとインベルターゼ量に応じた速度
で反応が進みブドウ糖が生成するので、それをグルコース・メーターで測定して
コカイン量を算出します。

このような簡単な原理で、しかも臨床的に普及している既存の血糖測定器で標的
分子が定量できるのです。特にポータブルで安価な汎用の測定器が可能になり、
家庭内や野外で関心のある標的分子が簡便に測定できるなど、途上国への普及を
考えても大きなメリットがあると思われます。今回の報告ではコカイン以外に、
感染マーカーのインターフェロン、アデノシン、ウラニウムなど幅広い分子が測
定できることが示されており、臨床検体だけでなく水や食品の汚染にも有力な測
定手段となる可能性があります。ただ、対応する機能的DNAが見つかっている標
的分子は今のところそれほど多くなく、それが課題だという批判的な意見もある
ようです(注2)。
機能的DNAセンサーの技術を開発したイリノイ大学の研究チームは目下操作方法
のさらなる簡素化と実用的な装置の開発を進めており、商品化はそう遠くはない
との見通しを持っています。

注1 http://www.eurekalert.org/multimedia/pub/34380.php?from=190292
注2 http://www.technologyreview.com/biomedicine/38137/?p1=A2