No.287 タンポポの綿毛の上に軽々と乗る超軽量金属材料
タンポポの綿毛ボールの上にきらきら光った1辺数センチメートルのブロックが 乗っている写真がネーチャー誌に出ていました(注1)。 ブロックはカリフォルニアの大学と協力企業が作成した新しい材料で、中空のリ ン酸ニッケル製のチューブの3次元格子状のメッシュでできています。その重さ は極めて軽く、1立方センチメートル(cc)で0.9ミリグラム(mg)しかありませ ん。鳥の羽毛(2.5mg/cc)の約3分の1、発泡スチロール(20mg/cc)の約200分 の1とのことです(注2)。また、ただ軽いだけでなく機械的な強度も他の超軽量 材料よりもすぐれており、エネルギーを粘弾性ポリマーと同レベルで吸着し散逸 させることができます。用途としては電極材料や音や振動のダンパーが考えられ るそうです。 この超軽量の3次元格子の金属メッシュの作り方は原著(注3)を基に注2に図解 されています。先ず紫外線硬化性樹脂の3次元格子を作り、それを触媒液に浸漬 後ニッケル‐リン溶液に移して樹脂の表面に厚み100ナノメートルのニッケル‐リ ン合金の層を形成させます。その後樹脂をエッチングで除くと抜け殻状に中空の ニッケル‐リン合金の格子状構造物が形成されます。構造物の物性値は次のとお りで、しかも99.99%空気でできています。 個々のナノチューブ:硬度=6GPa、弾性係数=210GPa 格子構造物:圧縮率=529GPa、50%圧縮後の復元率:98% 上記の数値がどの程度の強度や弾力性を示すかはピンときませんが、そのような 筆者をおもんばかってか、注2では「錫箔で遊んだことのある人は誰でも金属は 容易に元にもどらないことをご存知でしょう。今回の3次元格子の金属メッシュ の強度と50%圧縮してもほぼ元通りになるという弾力性は特筆すべきものなので す」と説明されています。 夢のようなこの金属材料の目下の課題は生産コストが高いことです。そこで当面 はコストを度外視してでも、ともかく高い性能が求められる宇宙開発や戦闘材料 への応用が先行するだろうと考えられています。事実、米国防衛省の国防高等研 究計画局(DARPA)が100%この研究に資金を提供しています。 注1 「軽い弾力性のある金属メッシュ」、Nature, 479:448 (2011)。文中に紹 介したタンポポの写真は注2のURLで閲覧できる。 注2 http://www.dailytech.com/New+Metal+Nanomesh+is+Nearly+100+Times+ Lighter+Than+Styrofoam/article23318.htm 注3 「超軽量金属微細格子」、Science, 334: 962-965 (2011)



