『環境ナノ部材』産業を集積化 - 世界トップレベルの『環境ナノ』拠点形成へ

No.288 水も油も寄せ付けない表面加工

水をはじくハスやサトイモの葉の構造を模して撥水性の表面を作り出した話は今
やナノテクの世界では古典になっています。同じように油をはじく表面ができれ
ば産業的に幅広い用途が期待されます。しかし水よりも表面張力がはるかに低い
油をはじかせることは難しく、ナノリソグラフィーで撥油性表面を作ることに実
験室レベルで成功してはいましたが、その技法は複雑すぎ、さらに簡単な手法の
開発が待たれていました。
ドイツのマックス・プランク研究所の高分子研究部門は、ロウソクの火で煤ガラ
スを作るという身近で簡単な方法を取り入れて、油を寄せ付けない表面構造を作
ることに成功しました(注1、注2)。
表面加工は次の手順で行います。①先ずガラスの板をロウソクの火にかかげて煤
を堆積させる(粒徑約40ナノメートルの煤粒子がスポンジ状に堆積)。②堆積し
た煤粒子に蒸着法でシリカを25ナノメートルの厚みにコーティングする。③摂氏
600度のオーブンで加熱する(煤は分解して透明になる)。④蒸着法でフッ素化シ
リコンを堆積させる。
このように加工したガラス板に油や溶媒をスプレーするとそれらの液は玉状にな
り、ピンポン玉のように跳ねるのが観察されます。水をスプレーしても同様で
す。ガラス板はまったく濡れません。
ガラス以外にもアルミナ、スチール、銅の表面も同じようにコーティングできます。
油も水も寄せ付けない理由の一つはフッ素化シリコンで覆われていることです。
そしてもう一つ、今回の成果として重要なのは、不規則な孔が迷路のように繋
がったスポンジ状の構造になっており、しかも表面が微細な無数の球で覆われた
構造になっていることです。

水でも油でもはじいてしまうのでその表面を‘superamphiphobic’と呼んでいま
す。super=超、amphi=両(両生類はamphibian)、phobic=嫌う(疎水性は
hydrophobic)を組み合わせた造語ですがここでは‘superamphiphobic’を「超撥
油/水性」と呼んでおきます。
超撥油/水性表面が産業的に大きな需要があることは容易に類推できるでしょ
う。セルフクリーニングのビルディング・パネルや太陽光発電パネル、マイクロ
フルイディクス技術を使った医療検査装置、浄水設備のろ過装置、身近なところ
では決して汚れないメガネもあるでしょう。ガスタービン内部の汚れ防止も大き
な用途だそうです。
今のままでは脆く、傷つきやすいので実用には耐えませんが、超撥油/水性表面
が比較的簡単に作り出せたことは大きな一歩で、今後、バイオメディカル分野を
含め、実用化に向けた試みが加速すると思われます。

注1:http://www.technologyreview.com/printer_friendly_article.aspx?id=39227
注2:http://www.rdmag.com/News/2011/12/Materials-Nanotechnology-
Nanostructured-glass-cleans-itself/