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No.289 雪の結晶

新しい年に入り、このメルマガも9年目の春を迎えました。今年もご愛読ください。

さて、今年はお正月以来の寒波で雪が舞う日が続いています。そこで今回は雪の
結晶のことを取り上げます。
先ずは多様な雪の結晶の造形美を紹介したカリフォルニア工科大学の「雪結晶
フォトギャラリー」(注1)をお楽しみください。そのウェブページの”Guide to
Snowflakes”の欄に雪の結晶が大まかに35種類に類別されることが示されていま
す。某乳業会社の商標でおなじみの形以外にもさまざまな形があるようですが、
ウェブページの主宰者であるリッブレヒト(Kenneth Libbrecht)教授は自分の
一番のお気に入りは車軸に車輪が二つついたような「蓋つき柱」(capped
columns)だとしています(注2)。
Historic Snowflakesの欄を見ると、最初に雪結晶の写真を撮影したのはアメリ
カのお百姓のベントリー(Wilson Bentley)氏で、その人は趣味が高じて生涯に
5000枚の写真を撮り、1931年に「雪の結晶」という本まで出版したことが示され
ています。また雪の結晶の研究のパイオニアとして北大の低温物理学者・中谷宇
吉郎教授が大きな貢献をされたことが紹介されています。
寺田寅彦の弟子である中谷教授は著書「雪は天からの手紙」で有名ですが、同教
授は1936年に、結晶のできる時の温度が零下2度だと平板状、零下5度になると円
柱状、零下15度では再び平板状、零下30度以下になると再び柱状になるという不
思議な現象(中谷ダイヤグラム)を発見されました。その後四分の三世紀が経ち
ますが、中谷ダイヤグラムの謎はまだ解明されておらず、リッブレヒト教授はそ
の謎に挑戦しているのだそうです(注2)。

雪の結晶は基本的には6回対称(six-fold symmetry)です。それは氷の結晶格子
の対称性に起因します。先ず種の種のような微細な六角柱の氷の結晶ができ、そ
の6つの角が湿った空気に触れて次の種結晶が生成します。角で氷が成長するの
はそこが他の部位よりも出っ張っているからです。種結晶は雪雲の中を落ちてい
く過程で結晶はさらに成長しますが、生じる結晶の形は通過時の温度と湿度に鋭
敏に影響されます。その時6つの角がさらされる条件は同一なので結晶同調して
成長し、複雑でほぼ対称の雪の結晶になります。なお、雪雲の内部環境は複雑で
同じ分子構造の結晶ができる確度はゼロに近いとのことです。

雪の結晶成長の不思議の解明はナノレベルの自己集合のメカニズムにヒントを与
え、新しい素材の創製にもつながるだろうと期待されています(注2)。

注1:http://www.its.caltech.edu/~atomic/snowcrystals/
注2:Nature, 480:453-454, 2011.