No.180 ムール貝の接着-その後の展開-
ムール貝が磯にがっちり付着するのは、貝がタンパク質を分泌し、それが海水中で鉄イオンの作用で固まるためだという話題を4年前にこの連載で紹介したことがあります。その後、貝の接着タンパク質がドーパミンを含んでいることがわかりました。
ドーパミンと聞いて何を連想されるでしょうか。鬱病やパーキンソン病と関係した中枢神経系の神経伝達物質だという連想が一番常識的だと思います。ですからドーパミンがこんなところに出てくると少し面食らいます。
ドーパミンを含んだタンパク質というのも、遺伝子の情報を基にタンパク質ができるセントラルドグマを習った方には疑問でしょう。こちらの方はフェニルアラニンという通常のアミノ酸を含むタンパク質がセントラルドグマどおりにできて、その後に酸化されてベンゼン環(例の亀の甲)に水酸基(-OH)2個が隣り合わせに導入されるということが分かっています。「ドーパミンを含んだタンパク質」は少し誤解を生じるでしょうが、正確にいえばタンパク質の一部がドーパミンと似た部分構造をしているという意味です。
このドーパミンに注目して材料開発を精力的に進めているのが、シカゴ近郊のエバンストン( “エ”にアクセントをつけないと当地では通じません)という街にあるノースウェスタン大学のメッサースミス教授です。同教授達は、最近、驚くほど簡単で、汎用性のある表面加工技術を開発しました。 サイエンス誌の要旨によると、コーティングしたい材料をドーパミンの水溶液に漬けるとドーパミンが勝手に重合して(手をつなぎあって)ポリドーパミンができ、それが表面粘着性の薄い被膜をつくるそうです。この被膜の形成は、プラスチック、貴金属、セラミック、半導体など全く相手を選びません。テフロンですら。 さらに、このポリドーパミン層の上にいろいろな機能を持った2次被膜(ad-layer)を重層することができます。この場合も材料を選びません。メッサースミス教授は毒性のある金属を吸着する材料の2次被膜を持つペレットを作り、それをつめたカラム(筒)で浄水することを考えています。医療材料の抗菌コーティングも朝飯前です。 また、被膜を通常の方法でマイクロリソグラフィーにより複雑なパターンを掘り込んでから、その表面に金属溶液を流すと、接着層が掻きとられていない場所にだけ金属が堆積し、電子回路が描けるとのことです。それもどのような材料の上にでも。
いろいろな所ですぐにでも役に立ちそうな技術のように思われませんか?(I)
Science 19 October 2007 http://www.sciencedaily.com/releases/2007/10/071018142509.htm
Copyright (c) 2003 KYO-NANO. All Rights Reserved.
このドーパミンに注目して材料開発を精力的に進めているのが、シカゴ近郊のエバンストン( “エ”にアクセントをつけないと当地では通じません)という街にあるノースウェスタン大学のメッサースミス教授です。同教授達は、最近、驚くほど簡単で、汎用性のある表面加工技術を開発しました。 サイエンス誌の要旨によると、コーティングしたい材料をドーパミンの水溶液に漬けるとドーパミンが勝手に重合して(手をつなぎあって)ポリドーパミンができ、それが表面粘着性の薄い被膜をつくるそうです。この被膜の形成は、プラスチック、貴金属、セラミック、半導体など全く相手を選びません。テフロンですら。 さらに、このポリドーパミン層の上にいろいろな機能を持った2次被膜(ad-layer)を重層することができます。この場合も材料を選びません。メッサースミス教授は毒性のある金属を吸着する材料の2次被膜を持つペレットを作り、それをつめたカラム(筒)で浄水することを考えています。医療材料の抗菌コーティングも朝飯前です。 また、被膜を通常の方法でマイクロリソグラフィーにより複雑なパターンを掘り込んでから、その表面に金属溶液を流すと、接着層が掻きとられていない場所にだけ金属が堆積し、電子回路が描けるとのことです。それもどのような材料の上にでも。
いろいろな所ですぐにでも役に立ちそうな技術のように思われませんか?(I)
Science 19 October 2007 http://www.sciencedaily.com/releases/2007/10/071018142509.htm
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